作家買い。
裏切られませんでした。
宮部作品にはよくあるんですが
前の作品に出ていた、あの人、あの場所が
新作にちりばめられる、ってのがありまして
本作も
主人公の北一が住んでいるのは、
『桜ほうさら』で笙之介が住んでいた「富勘長屋」
(桜ほうさら、って暗い話なのよ・・。)
『〈完本〉初ものがたり』で登場した「謎の稲荷寿司屋」の正体が明らかに⁉
本作だと、え~、って感じ
☆
物語は
まだ下っ端の、雑用係でしかない見習い岡っ引きの北一(16歳)が主役。
3歳の頃に、親にはぐれて
迷子として親分が預かったけど、迷子届がなかったので
捨てられたんだろう、って。
拾って育ててくれたのが
イケメンでやり手だった千吉親分。
岡っ引きの親分は、手当だけではやっていけません(薄給だし下っ引きを養ってる)
賄賂を盗るか、本業を持つか、なんですが
千吉親分の本業は、文庫売り(本や小間物を入れる箱を売る商売)
北一は、その箱売りを手伝って生計を立ててました。
でも、親分がふぐに当たって急死して
生前から、十手は配下のものには継がせない、って明言してて
配下は散り散りになります。
親分の本業の、文庫売りを継いだのが一の子分・万作なんだけど、この女房・おたまが性悪。
親分の未亡人・松葉は、間に入った人がいて、お金をもらって別居。
小女のおみつ一人をおいて、盲目だけど自立してます。
北一は、性根の良い子で、親分に自分の子のように育てられただけのことはあるって
親分を知る何人かにほっこり愛されてますが、当人は自信がないのね。
十手ももちろんもらえず、性悪妻のおたまにいじわるされながら
文庫のふり売りで生計を立てることに、
ってのが、性格&背景描写です。
前に、初ものがたりも、桜ほうさら、も
備忘録レビューしてます。←こちら。
☆
ふぐと福わらい
双六神隠し
だんまり用心棒
冥途の花嫁
☆
4つの事件に、北一、おかみさん、元忍者らしいきたじ、と登場人物が絡みます。
☆
ふぐと福笑い、は、千吉親分がふぐで亡くなっての顛末と
親分が亡くなったから、相談相手がいない、って話から
呪いの福笑い、を、無事に治めるために、盲目の女将さんがでばって
無事に始末する話。
☆
双六神隠し、は
三人の寺子屋通いの仲のいい三人男子がいて
その子たちが、双六を拾って遊んだら、一人が神隠し
一人に3両が支払われ、最後の一人が、閻魔様のとこへ、って。
姑にいびられて息子を取り上げられ、姑に似たその息子を愛せないって母親に
うとまれた跡取り子が
賢く頭でひねりだした作戦でした。
可愛そうだけど、深いお話。
☆
だんまり用心棒は、北一が、ある屋敷の床下に埋まっていた人骨の始末を頼まれ(ほぼ、おしつけられ)
始めは嫌だったけど、屋敷の人は同情してやさしくしてくれるし
骨の人だって、好きでここで死んだんじゃないんだ、って思うようになると
供養かねて、大事にしてやろう、って思うのね。
こういうとこが、北一がみんなに愛されるゆえんです。
で、人骨が持っていた烏天狗の根付。この図柄を公開して名前探しをするのですが
北一をいろいろかまってくれてる
差配人の富勘が、北一と一緒に成敗した性悪跡取り男(今は勘当された)の恨みをかっていて
富勘が拉致られ、血痕が残り、ってことがあって
皆が、次は北一が狙われる、ってやんわり守っていたら
北一が動き回って、あるぼろい湯屋へとたどり着きます。
そこの釜たき男が、浮浪者で行き倒れたのを、助けてもらってから働いてる若者で
15年前に亡くなった身内の「喜多治」って名前をもらって、居場所をもらっててその体に、烏天狗の入れ墨が。
おお。
で、キタジは、北一が、親父の亡きがらを大切に掘り返してくれた、って恩を感じ
湯屋のみんなにも恩を感じて、いろいろ動くわけです。
このキタジが、むさくるしいかっこしてますが
実はイケメンで、動きをみると、忍者かな?
☆
キタジの手助けで富勘を助けて、キタジは、だんまりしながら、湯屋の用心棒なんだな、ってキタイチは思って
キタジが、人骨とのかかわりあり、ってことも、いろいろなことも
黙って、交友関係だけがつづくようです。
このキタジ、が登場して、北一とキタジできたきた捕物帖なのか?
☆
文庫を売ってくれる、万作の女房のおたまが
北一を、それは邪険にするので
ついに、周りが動き出し
北一も、おたまが「女将さんに金を払ってるのは私らだ」って言い出したので
ついに切れまして、縁切りです。
縁切りしたあと、文庫売りをするために
自分で文庫をこさえないといけないんですが
そこで、文庫に絵をかいてくれる人を探して
たどりついたのが、ケヤキ屋敷の若様です。
☆
けやき屋敷は、北一がたまたまご縁を得た
小普請組組頭・椿山勝元の下屋敷で
ここに、用人の青海新兵衛さんがいて
この人とも、北一は友好関係になります。
お武家様だから、友人にはなれないんですが
青海さんが許してくれてるので、茶飲み友達。
で、この時代、プロの絵師は高いけど
お武家さまの内職なら安いよ、ってことで
若様が暇つぶしになる、って感じで絵をかいてくれて
これを文庫に仕立てることになりました。
そんなこんなで、北一の独立話は好調だったんですが
最初の品を披露する席で
亡くなった妻の生まれ変わり、ってのが現れて
婚礼は破談になります。
人慣れした富勘とかは、騙りだな、って見抜いてますが
愛妻の生まれ変わり、って言われて、大店の跡取りが
結婚が決まっていた相手より、生まれ変わりを自称する小娘にたぶらかされ
さらに、元乳母に、大店の妻と、二人が亡くなる事態に。
女将さんが出張って、犯人をあげますが
跡取りさんの結婚話は流れるしね・・
後味の重いお話です。
でも、北一は、悪党を捕まえられて感謝されるのはいい仕事だ、って
岡っ引きへの道を歩き出し
キタさんに、また来るよ、って伝えてびっくりされるのでした。
って感じで読了。
面白くて、一日で読んじゃった。
これ、続きがでるようです。
次巻も読みます(^^)
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